Sailing in the Mediterranean

地中海の神話

昨年、世界中のアーティストや冒険家と交流のあるフォトグラファーのマグダレナ・ウォーシンスカ(以下、マグダ)から「『Sailing Collective(船旅のスペシャリストたち)』がギリシャを航海する計画があるらしく、この旅をOdysseyに記録してみてはどうかしら?」という魅力的な提案がありました。それに賛同した私たちは、さまざまな方面からクルーを招集し、彼らの旅を記録することにしたのです。


以下、冒険家、起業家、そしてアウトドア愛好家でもあるステファン・ウィンガードが寄稿した内容になります。
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『Sailing Collective』の協力もあり集結した、国も経歴も異なった個性的なクルーたちは皆、マグダの友人という共通点しか無かった。しかしそれをひとつに結び付けたのは、熱い冒険心とハングリー精神に他ならないだろう。
来たる2016年の8月15日、『Sailing Collective』のボート「Jeanneau 54」に乗り込んだクルーは、最初の目的地アテネへと到着した。
ここでOdysseyに参加したクルーをご紹介しよう。オーストラリアの深海ダイバーであるストラス・ラブビッジ。ドラム・マスターにして未来のキャプテンことケリー・ステフィ。独学のボタニストにして船上のマーメイド、ハミルトン・トリム。エキゾチックなダイエットの提唱者でありシェフの顔も持つアレクシス・オリヴァー。我々が乗るボートの長であり笑いの達人、ダン・ディーリー。そして、バックフリップのエキスパートにしてビデオカメラの魔術師でもある僕、ステファン・ウィンガードだ。

CHANGING COURSE
予期せぬコース変更

帆を揚げてまもなく、僕たちはギリシャの島々に吹く、2つの大きな風を知ることになる。ひとつの風は北から、もうひとつは南からくるそれは、古いギリシャ神話で描かれているものと同じ風だった。この2つの風のおかげで、当初南の孤島に向かう予定だった僕らの航海計画は、コース変更を余儀なくされることになった。風のゆくまま、航海も臨機応変に、ってね。
迫り来る風は僕らの計画を変えさせたけど、その間にデッキ上での歩行をマスターしたり、いろいろと勉強する時間が得られたおかげで、40海里にもおよぶ航海は実にスムーズだったよ。ボートに乗っていたのは初心者ばかりだったから、僕らはベーシックなことから学び始めたんだ。

そしてそのまま流されながら西のサロニカ諸島に向かっている途中、僕らはエギナ島に辿り着いた。


FIRST STOP, AGINA
最初の停留所、エギナ島

正午過ぎ、小さなマリーナがある雰囲気抜群の村に到着。港には僕らが寝泊まりできる場所は無かったから、アンカー(錨)を下ろして夜風のために準備する必要があった。そしてその時、アンカリングの最初のレッスンが始まった。

アンカーを10メートル、20メートル、30メートル、40メートルと下ろす…。ボートの揺れが収まり、チェーンがきつく引っ張られるその瞬間まで、僕らはとにかく耐えて耐えて耐え抜いた。これでもう何の問題もないだろう、と皆が思い始めた時、「おっと、もういっちょ!」とキャプテンが叫んだ。熟練したセーラーとして、彼は海底にアンカーが引っ掛かった力を感じなかったのだ、と説明した。

最後に、僕たちのアンカーは地面をがっしりとキャッチした。その後ほどなくして、クルーは水中を飛び越えてエメラルド・ブルーに輝く海を目一杯に堪能することになる。

AN IMPROMPTU PIT STOP
即席のピットストップ

僕らが島に近づいたとき、想像をはるかに超えるであろう美しい入り江を発見した。それらもまた、地球上にいくつもある天国のうちの断片に過ぎないのかもしれないと思えたんだ。アタマで考えるよりも先に、僕らはあの青い海に飛び込んでみることにした。


ヒノキで覆われた山を登っていくのは一苦労。でも、てっぺんから見る景色はこの旅で見た中でもっとも美しいもののひとつだった。


NEXT STOP, POROS
次の停留所、ポロス島

ポロスの入口に差し掛かるにつれて、風は強く、船はするすると流れていったため、僕らはしっかりとジャイビング(帆船の操作方法)を行う必要があった。クルーのうち何名かがメインキャビンにいたのだが、キャプテンが頭上から「つかまれ!」と叫ぶのが聞こえた。山の向こうから強烈なスコールがやって来たのだ。激しい突風と荒波は10分から15分ほど続いたけれど、何とかやり過ごすことができた。

港で他の船のクルーと出会ったが、彼らも同様にスコールと強風でやられていた。そんな苦行を乗り越えた彼らの笑顔から学んだのは、「悲しみも笑ってやり過ごせ」ということ。それが母なる大地で自分の本質を見つけるコツだと、僕は感じた。

HYDRA, HERE WE COME
イドラ島、遂に来たぞ!

次に僕らはイドラ島を目指した。イドラ島は人の目につかない山々の間に隠れていて、僕らが近づくにつれこの村と美しい建物が見えてきた。

一度岸に上がると、何名かのクルーは単独の冒険に出かけ、残りのクルーは水中で泳ぐ。海はとても青く澄んでいて海の底には息を呑むほどで、まるでもうひとつの宇宙が広がっているようだったよ。この頃、僕らはもう自分が魚になったような気分で、陸よりも水中の方が快適に感じていたくらいさ!



僕たちが目指すのは、無数の洞窟と冒険スポットがある水辺のプレイグラウンド。ダン・“デンジャー”・ディーリーはカメラを掴みながら、岩場から完璧なジャンプを披露した。もし大会に出たら10点満点間違いなしだろうね。


AN ETERNAL ADVENTURE
永遠なる冒険

ハイドラでの魔法のような日々を過ごした後、僕らは必ずまたここに戻って来ようと誓った。僕たちの心は、がっしりとこの美しい島と海に括りつけられてしまったみたいだ。完璧な空の下、僕たちの人生はどこまでも可能性に満ちあふれていることを痛感した。この美しい岩場を魚になって泳いだ記憶は、強く心に刻み込まれることだろう。


マグダレナ、僕たちを素晴らしい旅に招待してくれてありがとう。キャプテンと『Sailing Collective』、僕たちの航海をより素晴らしいものにしてくれてありがとう。そしてSperry、僕たちに『7 SEAS(セブンシーズ)』を提供し、この現実離れした7日間の冒険に出る機会を与えてくれてありがとう!


2017年8月3日

ADVENTURES OF THE CREW

クルー達の冒険